再生可能エネルギーの普及が進む中、電力を「どのような形で調整し、安定して届けるか」が重要なテーマとなっています。こうした背景から注目されているのが、系統用蓄電池のビジネスモデルです。
系統用蓄電池のビジネスモデルとは、電力系統に直接接続した蓄電池を活用し、卸電力市場・需給調整市場・容量市場など複数の電力市場に参加することで、電力の調整機能を収益化する事業モデルです。
本記事では、系統用蓄電池の基本的な仕組みを整理したうえで、どのような形で収益を生み出すのか、そして事業として成立させるためのポイントを解説します。
系統用蓄電池とは何か?
系統用蓄電池とは、電力系統や再生可能エネルギーの発電所に直接接続される蓄電池のことです。
太陽光発電などで生まれた電気や、卸電力市場から購入した電気を蓄え、必要なタイミングで放電して電力系統を通じて市場に売ることができます。
このように系統用蓄電池は、電気を売買して収益を生み出す投資的ビジネス設備としての役割と、天候によって発電量が変動しやすい再生可能エネルギーを支え、電力の安定供給を実現するインフラとしての役割を併せ持っています。
その結果、電力需給のバランス調整や再生可能エネルギーの普及を後押しする存在として、近年大きな注目を集めています。

なぜ今、系統用蓄電池が注目されているのか
近年、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー(再エネ)の導入が急速に進んでいます。背景には、日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標があり、その結果、2024年には日本全体の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合が、平均26.5%まで高まりました。
※参考:国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況
一方で、再エネは天候や季節、時間帯によって発電量が大きく変動するという課題があります。このため、電力の需給バランスを保つには、他の発電設備の出力調整や需要側の調整、場合によっては再エネの出力抑制が必要となります。
こうした課題を解決し、再エネを無駄なく活用する設備として注目されているのが「系統用蓄電池」です。系統用蓄電池は、電力を貯めて必要なときに放電することで、電力の需給バランスを安定させる役割を担います。
国もその重要性を踏まえ、2022年12月に電気事業法を改正 し、系統用蓄電池の事業化を認めました。さらに補助金制度も整備されたことで、現在、導入が急速に進んでいます。

※出典:第3回GX実現に向けた専門家WG配布資料[PDF] 内閣官房(2023年11月8日)より抜粋。
※1:2023年5月末時点における系統用蓄電池の「接続検討申込」の総数に対して「契約申込」に移行した案件数の割合が約10%。今後、蓄電池コストの低減などにより事業化される確度が上がり、太陽光や陸上風力並み(電力広域的運営推進機関 発電設備等系統アクセス業務に係る情報の取りまとめ 2022年度の受付・回答参照)となった場合、20%程度となると仮定し、両ケースで「接続検討申込」 から「契約申込」に移行する案件数を想定。
※2:「契約申込」から「実際に稼働」へ移行する案件数については、第6次エネ基検討時に陸上風力発電の導入見込みで想定した既認定未稼働案件の稼働比率を参照。陸上風力の認定取得においては接続契約の締結が必要であり、このうち「実際に稼働」する案件については業界ヒアリング等を通じた結果約70%(陸上風力の場合)が稼働すると想定されており、本見通しの想定においても70%程度が 「契約申込」から「実際に稼働」すると仮定。
系統用蓄電池はどのように収益を生み出すのか
系統用蓄電池の最大の特徴は、単一ではなく複数のビジネスモデルを組み合わせられる点にあります。主な収益モデルは以下の3つです。
① 卸電力市場での売買(アービトラージ)
電力価格は時間帯や需給状況によって変動します。
価格が低い時間帯に電力を充電し、価格が高い時間帯に放電・売却することで、その差額を収益とする仕組みです。
卸電力市場を活用したアービトラージは、系統用蓄電池ビジネスモデルの中でも最も基本となる収益構造です。
市場価格の変動を前提としたこのビジネスモデルでは、運用戦略と予測精度が収益性を大きく左右します。
② 需給調整市場への参加
需給調整市場は、電力需給が急変した際に、調整力を提供できるリソースを評価する市場です。
系統用蓄電池は応答速度が速いため、調整力として高く評価されやすい特性を持っています。
ただし、一定規模の供給力や確実な応動が求められるため、単独での参加が難しいケースも少なくありません。
③ 容量市場への対応
容量市場では、将来にわたって電力を供給できる能力そのものが取引対象となります。
系統用蓄電池の出力は「供給力」として評価され、中長期的な収益機会につながります。
卸電力市場や需給調整市場と組み合わせることで、収益構造の安定化を図ることが可能です。
アグリゲーターの役割とは
これらの市場を効果的に活用するうえで重要な存在がアグリゲーターです。
アグリゲーターは、複数の蓄電池や分散型電源を束ね、一つの大きな電源のように制御・運用する事業者です。
このように複数の設備を統合して市場へ参加する仕組みは、アグリゲーションビジネスと呼ばれており、アグリゲーションビジネスでは、個別設備では満たしにくい最低入札容量や応動要件、需給計画の提出といった市場参加条件を、複数設備をまとめた「集合体」としてクリアすることが可能になります。
アグリゲーションビジネスについての詳しい内容は、以下をご参照ください。
系統用蓄電池におけるアグリゲーションビジネスとは?
アグリゲーターは、市場対応や制度変更への対応、需給予測、充放電計画の最適化などを担い、設備オーナーの運用負担を軽減しながら、全体としての収益性向上を支援します。
特に需給調整市場では、安定的かつ一定規模の調整力が求められるため、アグリゲーターを介したアグリゲーション運用によって、市場参加のハードルが大きく下がります。

系統用蓄電池事業に参入するメリット
- 電力インフラの一部として社会的意義が高い
- 複数市場を活用した柔軟な収益モデルが構築できる
- 再生可能エネルギー拡大とともに需要拡大が見込まれる
系統用蓄電池は、環境価値と経済合理性を両立できる点が大きな魅力です。
参入にあたって注意すべきポイント
一方で、系統接続までに時間を要するケースや、初期投資・運用設計の難しさといった課題も存在します。
また、市場制度やルールは継続的に見直されており、最新動向を踏まえた事業設計が不可欠です。
そのため、事業計画の段階から、電力市場や制度に精通したパートナーと連携することが重要となります。
まとめ:系統用蓄電池が切り拓く新たなビジネスモデル
系統用蓄電池は、電力の安定供給を支える重要な役割を果たすと同時に、新たなビジネスチャンスを生み出す存在です。再生可能エネルギーの導入が進むこれからの時代において、その重要性はますます高まっていくことが予想されます。
市場動向を理解し、信頼できるパートナーと取り組むことで、次世代の電力ビジネスモデルとして大きな可能性が広がります。
参入者が少ない今こそ、先行者利益を狙える絶好のタイミングです。弊社では、初回相談・ヒアリングから運用開始後のサポートまで一気通貫して対応しておりますので、安心して第一歩を踏み出していただくことが可能です。