中国製パワコンは本当に大丈夫?JC-STAR(セキュリティ新基準)時代の賢い選び方と、圧倒的なコストメリットとは!
はじめに:今注目される「サイバーセキュリティ」とパワコン選び
系統用蓄電池ビジネスを検討するうえで、重要な設備の一つが「パワコン(PCS:パワーコンディショナ)」です。
近年、蓄電池やパワコンなどの電力設備について、サイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。
特に、海外メーカーのパワコンを検討する際には、
「遠隔から操作されるリスクはないのか?」
「メーカーのクラウドと通信していて大丈夫なのか?」
「JC-STARなどの新しいセキュリティ制度には対応しているのか?」
といった疑問を持つ事業者様も少なくありません。
こうした懸念があるからといって、海外製・中国製という理由だけでパワコンを選択肢から外す必要があるとは限りません。
重要なのは、製造国だけで判断するのではなく、パワコンそのもののセキュリティ仕様、通信構成、認証・適合状況、遠隔保守の仕組み、脆弱性への対応体制などを総合的に確認することです。
中国メーカーには、世界各地の大規模な太陽光発電・蓄電池プロジェクトで採用されている企業もあり、価格競争力や大規模設備での導入実績が魅力となるケースがあります。
今回は、中国製パワコンを検討する際に知っておきたいサイバーセキュリティの考え方と、JC-STARなどの新しい制度、そして事業性を左右するパワコン選定のポイントについて分かりやすく解説します。
1.なぜ「サイバーセキュリティ」と「海外製パワコン」が注目されているの?
遠隔監視・遠隔制御が一般的になっている
現在の系統用蓄電池では、パワコンや蓄電池、EMS・PMSなどがネットワークで接続され、遠隔監視や出力制御、設備管理などを行う構成が一般的です。
また、メーカーによっては、保守や障害対応のためにクラウドサービスや遠隔メンテナンス機能を利用する場合もあります。
こうした通信機能は、設備の効率的な運用に欠かせない一方で、
・不正アクセス
・認証情報の漏えい
・ソフトウェアの脆弱性
・不適切な遠隔保守
・ファームウェア更新時のリスク
・サプライチェーン上のリスク
などについて適切な対策が必要になります。
特に系統用蓄電池は電力系統に接続される設備であるため、単純に「インターネットにつながっていなければ安全」と考えるのではなく、設備全体を一つの制御システムとしてセキュリティを考えることが重要です。
2.JC-STARとは?系統用蓄電池でも重要になる新しいセキュリティ制度
近年、IoT製品などのサイバーセキュリティ対策を評価・可視化する仕組みとして注目されているのが「JC-STAR」です。
JC-STARは、IoT製品について共通のセキュリティ要件に基づいて適合性を評価し、セキュリティ対策の状況を分かりやすく示す制度です。
星の数によって要求されるセキュリティレベルが異なり、★1は基本的なセキュリティ要件を対象とした制度となっています。
そして、系統用蓄電池を検討する事業者にとって特に重要なのが、蓄電池システムに関係するBMS・PCS・EMS等について、JC-STAR ★1の取得を求める制度設計が進められていることです。
そのため、今後系統用蓄電池を導入する場合には、
「このPCSはJC-STARに対応しているのか?」
「対象となる型式なのか?」
「BMSやEMSについてはどうなのか?」
といった確認が、これまで以上に重要になると考えられます。
なお、JC-STARは日本メーカーだけを対象とした制度ではありません。
したがって、中国製・海外製だからJC-STARの対象外というわけではありません。
一方で、実際の取得状況はメーカーや製品型式によって異なるため、導入する機器について個別に確認することが重要です。
3.中国製パワコンのセキュリティはどう考えるべき?
「中国製だから危険」「中国製だから安全」と単純には判断できない
パワコンのセキュリティを考える際に重要なのは、製造国だけではありません。
例えば、同じメーカーの製品であっても、
・通信方式
・クラウド接続の有無
・遠隔保守機能
・ユーザー認証
・ファームウェア更新方法
・脆弱性への対応体制
・ログ管理
・ネットワーク構成
・サポート期間
などによって、セキュリティ上のリスクは変わります。
そのため、中国製パワコンを検討する場合も、
「中国製だから危険」ではなく、「採用する製品とシステム構成にどのようなリスクがあり、どのような対策を講じるのか」
という視点で評価することが重要です。
4.ネットワーク対策は「多層防御」が基本
系統用蓄電池のサイバーセキュリティでは、パワコン単体ではなく、システム全体で対策することが重要です。
例えば、
・ファイアウォールによる通信制御
・VPNや閉域網の利用
・不要な外部通信の遮断
・アクセス権限の制限
・多要素認証などの認証強化
・通信ログの監視
・遠隔保守時のアクセス管理
・ファームウェアやソフトウェアの適切な更新
・ネットワークの分離
などを組み合わせます。
ここで重要なのは、VPNやファイアウォールを導入すればリスクがゼロになるわけではないということです。
ネットワーク対策に加えて、製品自体のセキュリティ、認証情報の管理、遠隔保守、ファームウェア更新、メーカーの脆弱性対応などを含めた「多層防御」が必要です。
つまり、
パワコン → ネットワーク → EMS/PMS → 遠隔監視 → 保守体制
というシステム全体でセキュリティを考えることが重要になります。
5.中国製パワコンを選ぶメリット
サイバーセキュリティへの対応が重要だからといって、海外製パワコンのメリットがなくなるわけではありません。
中国メーカーには、世界各地の大規模な太陽光発電所や蓄電池プロジェクトで採用されている企業もあります。
そのため、大規模設備での導入経験や量産体制、製品ラインアップなどが強みとなっているメーカーがあります。
① 価格競争力
中国メーカーのパワコンや蓄電池システムには、国産製品と比較して価格競争力を持つ製品があります。
系統用蓄電池は初期投資額が大きいため、PCSや蓄電池などの設備コストを抑えることは、事業の投資回収期間や収益性を検討するうえで重要なポイントです。
ただし、比較する際にはPCS本体価格だけを見るのではなく、
・EPC費用
・受変電設備
・EMS/PMS
・通信設備
・輸送費
・設置工事費
・保証費用
・保守費用
・予備品
・長期的なサポート体制
などを含めたシステム全体のライフサイクルコストで比較する必要があります。
② 大規模設備での導入実績
中国の大手メーカーには、世界各国の大規模太陽光発電・蓄電池プロジェクトへの導入実績を持つ企業があります。
大規模プロジェクトでの経験が豊富なメーカーでは、
・高出力・高容量設備への対応
・高密度な設備設計
・効率的な電力変換
・遠隔監視・制御
・大規模設備向けの保守体制
などが強みとなる場合があります。
導入実績を確認する際には、単純な導入件数だけでなく、日本国内の系統用蓄電池での実績や、導入予定設備と同程度の規模・仕様での実績があるかを確認することも重要です。
6.中国製パワコンを選定するときの「5つのチェックポイント」
中国製・海外製に限らず、系統用蓄電池向けPCSを選ぶ際には、以下の項目を確認しておくことをおすすめします。
① JC-STARへの対応状況
導入予定のPCS、BMS、EMS等について、JC-STARの取得状況を確認します。
重要なのは「メーカーとして取得しているか」ではなく、導入する具体的な製品・型式が対象となっているかです。
② 外部通信の仕組み
次のような通信について確認します。
・インターネット通信
・メーカークラウドとの通信
・遠隔監視
・遠隔制御
・ファームウェア更新
・遠隔メンテナンス
「どこから」「どこへ」「何のために」通信しているのかを把握することが重要です。
③ 遠隔保守の管理方法
メーカーや保守会社が遠隔から設備にアクセスできる場合には、
・誰がアクセスできるのか
・どのような認証を行うのか
・アクセス権限を制限できるか
・アクセスログを取得できるか
・必要なときだけ接続できるか
などを確認します。
④ 脆弱性・ファームウェアへの対応
万一、製品に脆弱性が発見された場合に、
・メーカーから通知されるのか
・どの程度の期間サポートされるのか
・ファームウェアを更新できるのか
・更新時に設備を停止する必要があるのか
・日本国内の窓口があるのか
などを事前に確認しておくことが重要です。
⑤ 日本国内での保守・サポート体制
系統用蓄電池は長期間運用する設備です。
そのため、購入価格だけでなく、
「10年後もメーカー・販売会社・保守会社が対応できるのか」
という視点も重要になります。
部品供給、故障時の対応、現地保守、予備品、ソフトウェアサポートなど、長期運用を前提に確認する必要があります。
7.「安いから選ぶ」ではなく「総合的な事業性」で選ぶ
系統用蓄電池では、PCSの価格だけで事業性が決まるわけではありません。
重要なのは、
初期投資額 × 性能 × 稼働率 × 保守費用 × 保証 × 寿命 × セキュリティ × 長期サポート
を総合的に評価することです。
例えば、初期価格が安くても、長期保証の条件や保守体制、部品供給、通信環境などに課題があれば、長期的な事業性に影響する可能性があります。
反対に、初期費用が高い製品であっても、性能や保証、保守体制などを含めて総合的に評価すると、事業計画に適している場合があります。
そのため、「中国製か国産か」という二択ではなく、設備全体として最適な構成を検討することが重要です。
まとめ:セキュリティと事業性を両立したパワコン選びを
系統用蓄電池では、サイバーセキュリティへの対応がこれまで以上に重要になっています。
特にJC-STARなどの新しい制度への対応や、PCS・BMS・EMSを含めた設備全体のセキュリティについて、事前に確認することが重要です。
一方で、中国製・海外製という理由だけで、パワコンの性能や事業性を判断することも適切ではありません。
重要なのは、
① 製品そのもののセキュリティ
② ネットワーク・EMS等を含むシステム全体のセキュリティ
③ メーカー・販売会社・保守会社による長期的なサポート体制
④ 初期費用だけでなく、ライフサイクルコストを含めた事業性
を総合的に確認することです。
「系統用蓄電池.com」では、系統用蓄電池の計画に合わせて、PCS・蓄電池・EMS等の設備構成から、ネットワーク・セキュリティ対策、設置、運用保守まで、事業計画全体を考慮したシステム構築をサポートしています。
参考記事:「メガソーラービジネス plus」中国製パワコン、サイバーセキュリティ対応は十分?
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00007/00193/?ST=msb&P=2