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基礎知識

電力の安定供給に貢献!再生可能エネルギーと相性抜群の系統用蓄電池

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近年、深刻化する地球温暖化の対策や脱炭素社会の実現に向けて、特に発電分野では温室効果ガスを排出しない「再生可能エネルギー(再エネ)」の導入が世界中で加速しています。日本でも2050年カーボンニュートラルの実現を目指して、太陽光発電や風力発電の導入が進められています。しかし、再エネは「天候に左右されやすい」という大きな弱点を持っているため、発電量が不安定になりやすく、電力の需給バランスを保つことが大きな課題になっています。

そこで注目を集めているのが「系統用蓄電池」です。系統用蓄電池は、電力系統(電力網)に直接接続され、発電された電力を一時的に蓄えて必要なタイミングで放電することで、電力の需給バランスを調整する役割を果たすことができる大型の蓄電設備であり、再エネの出力変動を吸収して安定供給を支える存在として急速に導入が進んでいます。

再エネと系統用蓄電池の「抜群の相性」

太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、石油や石炭などの燃料を使わずに自然の力を活用することで地球にやさしい電力を生み出せるクリーンな電力である一方、発電量が天候や季節によって大きく変動します。例えば、晴天の日中には大量の電力が発電される一方、夜間や曇天・無風の日には発電量が激減します。

この不安定さは、従来の火力発電や原子力発電にはなかった特徴です。電力の供給と需要は常に一致させる必要がありますが、再エネの導入量が増えるほど、バランスを取るのが難しくなっていきます。こうした背景から、再エネと系統用蓄電池の組み合わせが非常に有効とされています。太陽光発電で、日中の余剰電力を蓄電池に一時的に貯め、夕方や夜など必要な時に放電することで、需要と供給のタイミングのズレを解消することができるからです。これにより、再エネをより効率的に、安定して使うことができるようになります。

系統用電池が果たす3つの主な役割

系統用蓄電池は、ただ電気を貯めたり出したりするだけではありません。以下のようにさまざまな役割を系統用蓄電池は担っています。

1. 再エネ出力の平準化(ピークカット・シフト)

発電量が多い日中に電気を充電し、電力需要の高まる夕方や夜間に放電することで、電力の供給と需要のタイミングを調整します。これにより、再エネ由来の電力を無駄なく活用できるだけでなく、送電線の過負荷も抑制できます。

2. 電力系統の周波数調整

電力は常に50Hzまたは60Hzの周波数を保つ必要がありますが、再エネの変動でバランスが崩れると、周波数が変動します。蓄電池は瞬時に出力を変えられるため、周波数を安定させるための「緊急対応力」として高く評価されています。

3. 災害時の非常用電源・レジリエンス強化

地震や台風などの災害によって系統電力が断たれた際、系統用蓄電池がバックアップ電源として機能することで、重要な施設への電力供給ができるようになります。地方自治体や公共施設では、BCP(事業継続計画)の一環として蓄電池導入が進められています。

日本国内での導入動向

日本では、再エネ主力電源化の方針を背景に、経済産業省が系統用蓄電池の導入を政策的に後押ししています。また、系統蓄電池を活用した「需給調整市場」も整備されつつあります。これは、電力需給のバランスを維持するための調整力を提供した事業者に対して報酬を支払う制度で、蓄電池を活用して調整力を提供する「アグリゲーター」も登場し始めています。

大手の電力会社はもちろん、商社やベンチャー企業も蓄電池アグリケーション事業に参入しており、新たなビジネス機会として注目されています。

今後の課題と展望

一方で、系統用蓄電池の本格普及にはまだいくつかの課題も残されています。最大のネックは「初期導入コストが高い」点が挙げられます。数MWhクラスの蓄電池システムを構築するには、多額の初期投資が必要であり、特に中小企業や自治体によっては導入のハードルが高くなりがちです。

また、蓄電池は時間の経過とともに性能が劣化します。電池の寿命を延ばす技術や、廃棄時のリサイクル体制の整備といったサステナビリティの確保という課題もあり、長寿命化やサステナビリティへの配慮が今後の研究テーマとされています。こうした技術開発が進めば、より多くの場面で蓄電池が活躍できる未来が見えてくるようになるでしょう。

まとめ

再生可能エネルギーを主力電源化するためには、その出力変動に対応する柔軟な電力調整手段が不可欠です。系統用蓄電池は、まさにその要として、電力の安定供給を支える重要なインフラになるといえるでしょう。

今後、電力自由化やデジタル技術の進展とともに、分散型電源やVPP(仮想発電所)との連携が進むことで、系統用蓄電池の役割はさらに多様化していくことでしょう。

再エネ時代の新しい電力インフラとして、系統用蓄電池の今後に大きな期待が寄せられています。

参考

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