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市場動向

系統用蓄電池の現在の普及率は?

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近年、再生可能エネルギーの急速な導入拡大に伴い、電力系統の安定化を目的とした系統用蓄電池の重要性が急速に高まっています。系統用蓄電池は、電力の需給バランスを調整し、瞬時の周波数変動を抑制する役割を担っています。加えて、太陽光発電や風力発電などの変動する再生可能エネルギーの出力を吸収・平準化し、需要と供給のバランスを保つことで、電力系統の強靭性を高め、より効率的な電力システムの運用を可能にします。この記事では系統用蓄電池の現在の普及状況と、普及を促進する要因、阻害する要因についてご紹介いたします。

系統用蓄電池の役割とその重要性

系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続され、電力の充電と放電を行う大規模な蓄電池システムです。従来の発電設備とは異なり、電力を貯蔵し、必要に応じて放電することで、電力系統の安定化に貢献します。

引用元:経済産業省:参考資料(蓄電池)

再生可能エネルギーの太陽光発電、風力発電は自然環境に大きく依存しているため、天候や気象条件によって出力が左右されます。そのため、発電量が常に一定ではなく、電力系統における需給調整が困難になるという問題を抱えています。特に、太陽光発電や風力発電が電力供給の大きな割合を占めている地域では、突発的な発電増減が頻繁に発生するため、その変動を吸収し、電力の安定供給を可能にする系統用蓄電池が注目されています。

系統蓄電池によって、電力のピークシフトや周波数制御、さらには再生可能エネルギーが余剰になる際の電力貯蔵が可能になります。具体的には、電力系統の慣性力確保や電圧調整機能も持ち合わせており、従来の火力発電所が担っていた調整力としての役割を代替できる可能性があります。

系統用蓄電池は停電時における電力供給のバックアップとしても機能するため、病院や避難所などの重要な施設への電力供給を維持することができるため、災害対策としての価値も高まっています。

系統用蓄電池の普及状況

日本の系統用蓄電池の導入は年々増加傾向にあるものの、そのペースは緩やかです。

2023年度容量市場メインオークションの「応札容量」は「8万kW(全体の0.05%)」を応札していますが、これは将来的な稼働を見込んだ容量です。

引用元:経済産業省資源エネルギー庁:系統用蓄電池の現状と課題

2024年3月度の接続検討受付が約4,000万kW、契約申込が約330万kWと接続検討及び接続契約は、2023年5月末時点と比べて約3倍に増加していますが、例えば、2020年代中盤における日本の総発電設備容量が3億kW程度であるのに対して、系統用蓄電池の導入容量は発電設備容量全体を占める割合にとっては1%未満であると推測されます。

(2023年5月接続契約:約1,190万kW、接続検討約110万kW)

この背景には、蓄電設備そのものの導入コストの高さや、設備に係る技術的・制度的ハードルがあります。今後、電力系統への連系ルールや運用ノウハウの蓄積が整ってくると系統用蓄電池の普及加速が期待されています。

系統用蓄電池の普及率と地域差と用途

系統用蓄電池の設置状況は地域によって大きく異なります。再生可能エネルギーの導入が進む北海道、東北、九州地方においては比較的多くの蓄電池システムが稼働しています。これらの地域で太陽光・風力発電の出力変動の影響が特に大きいため、安定化対策として蓄電池の必要性が高いことが影響しています。

また、蓄電池の用途も多岐にわたっており、以下のように分類することができます。

  • ピークカット/ピークシフト:電力需要がピークになる時間帯の負荷平準化
  • 周波数調整:系統周波数の安定維持のための即時電力調整
  • 再生可能エネルギーの変動平準化:発電量の不安定さの緩和
  • 非常用電源:停電時における重要施設への電力供給の維持

それぞれの用途で性能要求や導入規模が異なるため、導入企業や自治体のニーズに応じた多様なシステム展開が進んでいます。

普及を阻害する要因と今後の展望

系統用蓄電池が普及しきれない理由としては、主に以下の課題点が挙げられます。

1. 高コスト問題

蓄電池コストは近年大幅に低下しているものの、初期投資が高額であるため導入の障害となっています。特に大型設備になると設備投資額も莫大な金額になるため、費用対効果の明確化が急務になっています。

2. 規制・認可の複雑さ

電力系統への連系や運用に関わる規制は多岐にわたり、事業者にとって大きな負担となっています。接続検討から運用開始まで長期間を要することも普及を遅らせる要因の一つとなっています。

3. 運用ノウハウの不足

系統用蓄電池の最適な運用管理のための高度な技術や経験がまだ十分に蓄積されていないため、効率的な活用法が進んでいません。

しかし、これらの課題は技術進歩や制度面の改善、官民の支援策により徐々に克服されつつあります。新しい電力市場の創設も後押しを促しています。政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言に向けて、蓄電池導入促進のための制度や措置も拡充されており、将来的には、蓄電池のコストがさらに低減し、普及率が飛躍的に向上することが期待されています。

まとめ

系統用蓄電池は、日本の電力システムの安定化と再生可能エネルギーの導入拡大において、欠かせない存在として注目されています。日本における蓄電池の普及は着実に進んではいるものの、全体の発電設備容量に対する比率はまだ限定的です。コストや規制の課題が依然として普及の大きな障害となっていますが、技術革新や支援政策の強化により今後数年で普及率が大幅に上昇すると見込まれています。

これにより、持続可能で強靭なエネルギー社会の実現に向けた重要な一歩として、系統用蓄電池の役割はますます大きくなることでしょう。

参考

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