歴史的高値圏:1トン13,000ドルの衝撃
2026年2月現在、銅価格は1トンあたり13,000ドル、国内建値で210万円を超える歴史的な高値圏に突入しています。かつての「1トン8,000ドル前後」という水準は遠い過去のものとなり、系統用蓄電池プロジェクトにおけるCAPEX(初期投資)を大きく押し上げる要因となっています。
本記事では、銅価格の高騰が系統用蓄電池の導入において「工事費」と「部材コスト」の両面にどのような影響を及ぼすのか、3つの視点で具体的に解説します。
1. ケーブル・電気工事費の「直撃」
系統用蓄電池は、蓄電池コンテナ、パワーコンディショナ(PCS)、変電設備を繋ぐために、大量かつ太い銅製ケーブルを必要とします。
- 電線価格のダイレクトな連動 国内の電線メーカーは「銅建値」に基づいて価格を随時改定します。現在の高騰は、そのまま現場への仕入れ価格に直撃します。
- 系統接続コストの膨張 特に系統用蓄電池では、電力会社の系統へ接続するための高圧・特別高圧ケーブルが長距離に及ぶことが珍しくありません。この部分の部材費だけで10〜20%単位のコスト増となる可能性があります。
- 見積有効期限の短縮というリスク 材料価格の変動が激しいため、工務店やプラントメーカーからの見積有効期限が「1週間以内」など極端に短くなっています。意思決定のわずかな遅れが、数百万円単位のコストアップを招く事態も発生しています。
2. 主要機器(PCS・トランス)の価格上昇
影響は目に見えるケーブルだけではありません。蓄電池システムの心臓部である周辺機器にも、多量の銅が使用されています。
- 変圧器(トランス)の価格転嫁 トランス内部の巻線(コイル)には大量の銅線が使われます。原材料費の高騰を受け、機器代金そのものが上昇傾向にあります。
- パワーコンディショナ(PCS)の下げ止まり 半導体不足が解消されつつある一方、現在はバスバー(導電板)やインダクタ等の金属材料費が、製品価格の下げ止まりや再上昇を引き起こしています。
3. 収支計画(LCOS)と収益性への影響
投資回収期間が長期にわたる系統用蓄電池事業において、初期投資の上昇は収益性(IRR)の悪化を意味します。
- 補助金予算との乖離 多くのプロジェクトは政府補助金を前提としていますが、交付決定時の想定を上回るコスト増により、事業者の自己負担分(持ち出し)が増えるリスクが高まっています。
- 工期遅延による「機会損失」 銅の需給逼迫により、特定の高圧ケーブルで納期が数ヶ月単位で延びるケースが報告されています。運用開始が遅れることで、需給調整市場や裁定取引での収益機会を逃すという、目に見えない損失も無視できません。
今後の見通し:構造的な銅不足は続く
2026年以降も、AIデータセンターの増設や電気自動車(EV)普及に伴う「構造的な銅不足」が予測されています。供給不足は深刻で、価格がかつての低水準に戻ることは当面難しいとの見方が大勢を占めています。
プロジェクトを成功させるためのアドバイス
現在プロジェクトを計画中の事業主様は、以下の対策を至急検討されることをお勧めします。
- 先行発注による材料確保:実施設計が完了次第、ケーブル類の見積もりを早期に確定し、発注をかける。
- 納期情報の常時アップデート:部材の納期遅延を見越した余裕のある工程管理を行う。